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猫の歯周病は何が原因?
歯周病になった猫が見せる症状や治し方のポイント
2024.04.03

歯周病になった猫はさまざまな症状を見せます。

口臭や口周辺のよだれ、そのうち食欲低下で元気がなくなったりと、ペットの猫に異変が見られると飼主様の不安も大きいですよね。

猫のお口トラブルは結構多く、知らないうちに歯周病が進行している猫も珍しくありません。

今回は、歯周病の原因や症状、治し方のポイントを詳しくお伝えしていきます。

1. 猫の歯周病の症状と原因を徹底解説

まずは、猫の歯周病によくある兆候をいくつかご紹介します。

症状チェック:猫の歯周病によくある兆候

・歯茎の腫れ、出血

歯周病になると歯茎の炎症が見られるようになります。

歯周病の進行は、
・歯石が付く
・歯肉が炎症を起こして歯が腫れる
・歯周炎で出血する
・歯がぐらぐらして抜ける
などのステップで起こるのが一般的です。

歯周病は「歯垢⇒歯石」という流れで起こりやすいですが、実は歯石がなくても歯肉炎が起こることもよくあります。
歯肉炎は高齢になるほどに発症しやすいですが、1歳前後という若い年齢でも起こりやすいと言われています。

・よだれが増える、口臭が強くなる

猫の歯周病が進むと、よだれが増えます。もともと猫は、犬とは違い“よだれ”が日常的ではない動物です。

猫のよだれが増えた場合、歯周病によってよだれの分泌が多くなっているかもしれません。よだれによる口周りの汚れ、口の違和感から口周りを気にする猫も多いです。

また、歯周病は進行するに従い細菌も増えます。口内の菌が増殖すると、まるでアンモニア臭のような口臭を発することがあります。

口臭は、猫のお口のなかだけにとどまらず、「猫の舐めた箇所」「猫が遊んでいる場所」などにも移っていることもあるでしょう。

・顔の腫れ、皮膚に穴があく

歯に膿がたまることや、細菌で歯肉炎がひどくなることにより、顔の腫れが起こることもあります。重度になってくると歯茎や頬に穴をあけるケースも考えられます。

・くしゃみや鼻水

炎症が進むと鼻腔にも広がり、くしゃみ・鼻水が多くなることもあります。・食欲がなくなる、体重が減る

初期の頃はお口の違和感程度ですが、進行して口内の炎症が拡大すると食事どころではなくなります。痛みも増して「食べたくない」と食欲の低下を引き起こし、次第に体重も減ってくるでしょう。歯周病の痛みで食事ができなくなる猫はとても多いです。

歯周病の進み方

初めは、歯周ポケットに歯垢が溜まります。その状態でデンタルケアが不足すると歯石が形成されていきます。次第に、歯石が炎症を起こし「歯肉炎」と呼ばれる状態に。さらに歯槽膿漏が進行し、歯の根や骨といった深い部分まで影響を及ぼすでしょう。

また、歯周病は「口内」だけにとどまらず、全身状態を悪化させることもあるため、「早期発見・早期治療」が大切です。

歯周病を引き起こす要因とは?

歯周病はさまざまな要因によって引き起こされる病気ですが、主なものが細菌感染によるものです。

近年、市販のキャットフードは多様化し、カリカリしたドライフードから柔らかいウェットフードまでさまざまです。猫の“噛む”という動作を必要とせずに食べられるウェットフードは、食事のたびに食べカスが溜まりやすいです。

噛む頻度が減って歯垢・歯石がつきやすく沈着、デンタルケアが不足して細菌が口内の炎症につながり歯周病を引き起こしています。

また、FIV(猫エイズ)やFelV(猫白血病)などウイルス疾患によって免疫異常を起こし、歯周病の背景になっているケースもあります。

そのほか、もともと生まれ持って歯並びが悪い、乳歯が永久歯の並びを邪魔している場合も、歯石が沈着しやすく歯周病のリスクが高まるでしょう。

2. 効果的な歯周病治療法

次に、歯周病の治し方についてお話していきます。

歯周病治療のステップ:診断から治療まで

・歯周病の診断方法

歯茎の腫れやよだれ、きつい口臭、歯が抜けたなどの症状で来院される飼主様もいらっしゃいます。できるだけ早めに歯周病が見つかれば、猫にとっても負担が少ないです。

動物病院での診断は、視診や血液検査、レントゲン検査、組織検査などを組み合わせて行います。

獣医師によって口の中の状況を詳しく見ることは、歯石の有無や炎症の度合いを知るために大事です。「入口に近い位置」「痛みが少ない」といったケースなら猫も比較的抵抗せずに視診をさせてくれるでしょう。

ただ、痛みがひどいところ、診察で口を触れられると嫌がって抵抗することも少なくありません。この場合は鎮静剤による診察を行うこともあります。

・歯周病の治療はどう進める?

歯周病と診断された場合の治し方は、進行度や状態によって内科的治療の投薬、外科的治療の抜歯が選択されます。

歯周病が口内以外の要因によるケースは、根本的な病気に合わせた治療が行われ、FIV(猫エイズ)などのウイルス疾患が原因で口内異常を起こしている場合、鎮痛剤や抗炎症剤といった内科的治療となるケースもあります。

【内科的治療】
軽傷であれば、抗生剤や炎症をおさえる投薬で治療を行います。ステロイドやインターフェロンなどが効果的な治し方です。歯肉炎が繰り返すようであれば、外科的治療を行います。

【外科的治療】 膿がひどく、かなり歯周病が進行している場合、悪化した歯を残すと骨に影響が出る場合も多いです。
「ぐらぐらと抜けそうな歯」「炎症がひどい歯」は、抜歯によってこれ以上の炎症を防ぎ、痛みもおさえられます。全臼歯抜歯(切歯と犬歯以外の歯を抜くこと)、全抜歯(すべての歯を抜くこと)が必要なケースもあります。

徹底ケア

せっかく抜歯治療をしても残った歯に歯石があると、歯周病の進行を食い止められません。歯石は歯ブラシなどで磨いても取り除けないため、麻酔下においてスケーリングを行って徹底的にケアします。

歯周ポケットと言われる歯の根元に溜まった歯垢や歯石を取り除ければ、歯周病の進行をおさえることができます。

麻酔はかけたほうがいい?

歯周病が初期の頃は症状も軽いケースが多いため、治療において麻酔をかけることなく投薬などで炎症をおさえられるケースがあります。

ただ、軽度でもスケーリング(歯垢や歯石除去)は基本的に全身麻酔をして行われます。研磨剤でざらざらになった歯がそのままでは食べカスが付き再び歯垢が溜まるため、つるつるな表面になるように磨かなければなりません。

猫の意識がある状態で歯石除去を行おうとすると、「抵抗して暴れる」「器具が刺さって口のなかが傷つく」「歯が割れる」といった危険をともないます。また、今後一切口を触らせなくなってしまう可能性が高いでしょう。

飼主様の安心のためにも、何よりも猫に痛みや不安を感じさせないためにも全身麻酔が必要です。

また、歯周病が重症化した場合は「抜歯」という選択肢になりますが、もちろん全身麻酔をしなければなりません。

3. 歯周病を防ぐための猫のデンタルケア実践法

歯肉炎や歯周病は高齢の猫に起こりそうな病気というイメージを持つ方もいるようですが、口臭や歯肉炎は若い頃でも起こります。若いうちでも歯周病のリスクがあることをふまえつつ、適切なケアをしていくことが大事です。

日々の歯磨き

人間と同じように、お口の健康のためには何と言っても日々の歯磨きが大事です。歯磨きは、歯垢・歯石が溜まることを防ぎ歯周病の予防になります。

理想的なのは毎日の歯磨きですが、難しい場合は1週間に数回程度でもいいでしょう。

また、歯ブラシでゴシゴシされるのを嫌がる猫も多く、無理をすると「触らせたくない」と抵抗する可能性が高いです。

・ふだんから猫の顔を触る
・慣れたら口元に触れる
・歯磨きシートで歯を撫でる
・大丈夫そうなら少し歯を磨くようにこすってみる
と段階的に歯磨きを習慣化してみましょう。

食事とフード選び

歯周病に効果的な猫の食事を見直しましょう。

歯を健康に保つには、「噛むこと」が大事です。猫の食欲をそそるウェットフードは歯に挟まりやすいうえ、噛む力も低下させます。基本的には栄養のあるカリカリしたドライフードを与えるようにしましょう。

ただ、市販されているキャットフードの場合、カリカリした食感ですが唾液と混じると柔らかく歯に挟まります。デンタルケアに特化したキャットフードを選ぶのもいいでしょう。

定期的な歯科検査

日常的な歯磨きケア、キャットフード選びに加えて、動物病院で定期的な歯科検査をしましょう。

歯周病は成猫の多くがかかる身近な病気です。歯磨きは万全な予防ではありません。定期的に診療しお口の状況を確認することが初期の異常の発見につながり、その後の治療も軽いもので済みます。

また、歯科検診と同時に、体重測定や心音のチェック、尿検査、血液検査などを行えば、ほかの病気との関連性も調べることができます。

特に、年齢が高まるにつれ、さまざまな病気の発症率が増えます。飼主様の不安も軽減できることが多いので、ご相談ください。

4. 飼い主ができる猫の口臭対策

猫の口臭は「歯周病のサイン」かもしれません。つまり、猫の口臭対策をすることや、口の異変を見逃さないことが歯周病の予防にもつながるのです。

口臭の原因と対策

猫の口臭は、デンタルケア不足で歯周病を起こしているときに感じられることが多いです。ウェットフードなどが歯に挟まり細菌が発生すると生臭さのある口臭が出るようになります。日常的に歯磨きケアで歯垢を落とすことが口臭対策の主なものになります。

ただ、すでに歯肉炎がひどい場合は獣医師に相談のうえ、適切にケアを進めることが大事です。

また、内臓疾患が原因で口臭がひどくなるケースもあります。胃や腎臓などの病気を患っている場合、嘔吐や下痢、いつもより元気がないなど全身に異変が起こることが多いでしょう。

ひとくちに口臭とは言っても、さまざまな原因があるため、定期的な歯科検診とともに健康診断を受けることも対策になります。

口臭ケア商品の活用

飼主様が歯ブラシを使って歯磨き中、猫がずっと口を開いているのは難しいこともあるでしょう。

そこで、口臭ケアの効果的なアイテム選びが重要です。

・歯磨きジェル
・飲み水に入れるデンタルケアアイテム
・歯にスプレーするもの
・歯磨きのガム
・サプリメント(口腔内の善玉菌を補充する)
など歯磨きアイテムの活用もおすすめです。

猫の口腔環境を衛生的に保ちつつ、歯垢や歯石の蓄積を緩和できるアイテムは、日々のデンタルケアにプラスしてみるといいかもしれません。

ただし注意したいのは“猫用”と謳われたオーラルケアを選ぶことです。

「何を選べばいいか分からない」「どこで購入したらいいか不安」など、デンタルケアに不安がある場合は獣医師にご相談ください。

5. 猫の歯周病ケアのまとめ

歯周病は、特にシニア猫がかかる病気というイメージをお持ちの飼主様もいらっしゃるようです。

しかし、実際には2歳を過ぎると全体の7割ほどの猫が“お口の中”に歯周病を発症している可能性があると言われています。

しかし、初期の歯周病は猫の異変も現れづらく、動物病院を受診するときはすでに「歯茎から出血」と痛みが辛そうなケースも多々あります。

飼主様によるデンタルケアや定期的な歯科検診など長期的な視点での猫の口内ケアをおすすめします。

愛猫の歯周病に関して気になるところがあれば早めに当院にご相談ください。