犬猫が下痢をしているのは何の病気?
病院に連れていくべき深刻な症状やすぐにできる対処方法を解説2024.10.02
愛犬愛猫が下痢をすることは、比較的よく起こるトラブルかもしれません。しかしその様子を見るのは飼主様にとっても心配なことですよね。
下痢の後に元気そうに見えると「様子見しようかな…」とも思える一方で、時間をあけて再び下痢をする姿を見て「病院に連れていった方がいいのだろうか…」と不安に感じる飼主様もいるのではないでしょうか。
犬猫の下痢深刻なものもあれば、様子を見てもよいものまで様々です。
今回は犬猫が下痢をしている際に疑うべき病気や、病院に連れていった方がよい症状、飼主様がご自宅でできる対策などについて詳しくお伝えします。
Contents
犬猫の下痢とは?
はじめに犬猫の下痢の種類と深刻な症状について見ていきましょう。
犬猫の下痢の種類について
犬猫の下痢には急性下痢と慢性下痢の2つのタイプがあります。
急性下痢の特徴は、短期間のうちに発症し、治療の有無にもよりますが、数日程度でおさまる一過性の下痢のことです。
急性下痢は、
・食べすぎ
・劣化したフードを食べた
・水分を多く取り過ぎた
・生活環境が急に変わった(留守番や引っ越しなどのストレス)
・誤食や誤飲をしてしまった
などの原因が考えられます。
様子見のまま数日程度で下痢症状が改善できるケース、整腸剤や下痢止めなどの治療が必要なケースなど、急性下痢でも症状は変わってきます。なかには、なかなか治らずに慢性下痢になってしまうケースもあります。
慢性下痢の場合、3週間以上も症状が続きます。
下痢が慢性化している場合、体調に変化がなく比較的状態が安定しているものから、体重減少や食欲元気の低下を伴う危険なものまであります。慢性下痢の治療には、原因の特定やその治療において、一般的に期間を要すため、早めに診察を受けた方が良いでしょう。
便の状態(硬さ)を観察することが大事
下痢とはひとくちに言っても、状態によって重症度が異なってきます。
いつもの便と比べて「柔らかい・便の形が維持されている(手で掴める程度)」なら“軟便”と言い、比較的症状は軽めです。
一方、泥のような“泥状便”、さらにほとんど水のような“水様便”など、便の形を保てず「ほぼ液体」なら症状は重めと考えることができます。
その他、
・血が混ざっている(赤い色・黒い色)“鮮血便・潜血便”
・粘膜が混ざっている(ゼリー状のものが混じる)“粘液便”
などは消化器系に異常が起こっている可能性が高まり、重症度が高い状態と言えるでしょう。
原因が「小腸」か「大腸」かで下痢の特徴が違う
小腸性下痢の場合、
・便の量が増える
・排便回数はいつもとあまり変わらない、もしくは増加
・しぶりはない
・便の粘液はない、もしくは少しだけある
・体重減少や嘔吐、脱水もともなう
という特徴があります。
一方、大腸性下痢の場合、
・便の量はいつもと同じ、もしくは減る
・排便回数がかなり増える
・しぶりがある
・粘液便や鮮血便が見られる
・便の粘液が多い
・体重減少は少しだけある
・脱水もある
などの傾向にあります。
どちらが原因の下痢かによって治療の方向性も変わってくるため、便の回数や量、便の特徴など飼主様からの情報が参考になります。
病院受診の際に説明できるように、スマホで写真を撮るなどしておくと便利です。
年齢別のよくある下痢の原因
仔犬、仔猫の場合、「新しい家族になったばかり」という環境の変化がストレスとなって下痢を起こすケースがありますが、ペットショップやブリーダーから購入した動物であっても、すでに寄生虫やウイルスに感染していることは、残念ながら一般的にあります。
家に迎えて2-3カ月くらいで初めて下痢になり、調べてみると寄生虫がいたという話もよくあります。
適切な治療をしなければ、発育不全や命にかかわることもありますが、多くは治療で良くなります。しかし、体力のない幼い動物にとって、下痢を放置したり、食欲低下を起こしたりすることは、低血糖状態になる場合もあり危険です。
必ず便を持参して、早めに動物病院を受診しましょう。(下痢をしていない場合でも、健診の際には便検査を受けましょう。)
成犬、成猫であっても、急に下痢を起こすことはあります。
なかでもストレス性下痢や、食事変更、誤食による下痢は一般的です。
ストレスはその動物により様々で、旅行、イベント、来客、家族構成の変化、トリミングやペットホテル、留守番など、いつもと違うことは何でもストレスになる可能性があります。
フードの変更は2週間程度かけて少しずつ行うこと、拾い食いの癖がある動物は、散歩時に制御したり、室内の整頓に注意したりする事が大切です。
心当たりのない下痢は、病気の症状であることが考えられます。早めに動物病院を受診しましょう。
老犬老猫の場合は、体が衰えてきたことで何らかの疾患が起こり、それに伴った下痢が増えてきます。下痢・嘔吐による脱水症状や削痩はさらなる体力低下をもたらします。
また、免疫力が老齢動物は、下痢による膀胱炎や、嘔吐による誤嚥性肺炎など他の病気につながる危険もあります。
慢性下痢は、体質的な問題や、腸粘膜の病気によるものも多く、若い子から高齢の子でも問題となります。その原因の多くは治療に対する反応見たり、詳しい検査を行ったりすることが必要です。
普段から健康観察をして、下痢を起こしがちな疾患が潜んでいないかチェックしておくことも大切です。
腸以外の問題で下痢が起こる事も
一般的に下痢というと、胃腸の問題で起こることがほとんどです。しかし犬猫では、腸以外の問題から下痢を起こしていることもよくあります。お腹が弱いだけだと思っていたら、実は他の臓器の異常であったということもあるのです。
例えば、犬であれば膵臓の外分泌不全や、肝臓の機能障害、ホルモン疾患による下痢は一般的です。猫では慢性膵炎や胆管炎、リンパ腫などの病気にも注意が必要です。
愛犬愛猫の下痢に効果的な自宅での対処法
下痢をしている愛犬愛猫の様子に、病院に連れていった方がよいかどうか…と飼主様は不安ですよね。まずは落ち着き、犬猫の様子を確認してみましょう。
飼主様ができる自宅での効果的な対処法をご紹介していきます。
体調を観察してみる
下痢の回数や状態、ほかの症状をチェックしましょう。
下痢を頻繁に何度も繰り返している、「ぐったり」「震えている」「熱がある」のは、消化器系の疾患やウイルス感染などの病気が潜んでいるかもしれません。
様子を見ているうちに危険度が高まるため、早めの受診が必要です。
例えば、
・「朝に下痢を1回。その後下痢はせずに元気。食欲もある」
・「朝から水状の便を何度も繰り返している。元気もなくぐったりしている」
と2つのケースなら、後者の方が重度な症状と言えるでしょう。
1日のうちに何度も下痢をし、ぐったりした印象、嘔吐も見られるなどの様子あれば、獣医師への相談をおすすめします。
なるべく安静にさせる
下痢が起こったら、なるべく安静に過ごさせましょう。
ドッグランなどの激しい運動はもちろん止めて、散歩時間も短めに。
家の中でもあまり興奮させないようにしましょう。
また、シャンプーなどで体を濡らすと体が冷えて、さらに状況が悪くなります。
下痢をしているときは控えましょう。
食事の量を調整する
下痢をした直後は、胃腸粘膜はまだ弱っています。
いつも通りの食事をすると負担となり、再び下痢をするリスクがあります。食べることで消化管は動きますが、かえって刺激を受けて下痢が出てしまうかもしれません。腸内細菌叢は乱れていて、食べ物を消化する準備が整っていないことも予想されます。
胃腸が回復しやすいように食事を抜く、もしくは半分以下の量に調整しふやかすなどの方法も、応急的な対応として効果があると考えられます。(※仔犬、仔猫に絶食はさせないでください。肥満ネコへの長期絶食はしないでください。)
形状が残りつつ“柔らかい”便の場合、比較的軽度の下痢症状のため、食事を抜かずともいいケースがあります。
下痢の直後は避けつつ食事量を少な目にし、胃腸への負担を減らしましょう。ドライフードなら、ふやかしてあげるのも有効です。下痢の回数が減れば、胃腸への負担が少ない範囲で少しずつ食事を与えて様子見ができます。
でも食事を食べたがらないときは体調が優れないのかもしれません。
無理強いせずに、犬猫の食事ペースを尊重しましょう。
ただ、「下痢・嘔吐」の両方が起こっている場合、胃腸炎を起こしている可能性があります。
1日に何度も下痢・嘔吐を繰り返しているときは、動物にとっても辛い症状かもしれません。できるだけ早めに動物病院の受診をおすすめします。
飲み水はこまめに交換し、脱水対策を
下痢が続くと脱水症状が起こります。脱水症状は犬の体調を悪化させるかもしれないため、お水を飲ませてあげましょう。
また特に猫は、新鮮な水やお気に入りの水場を好む傾向がありますので、それぞれが好む方法で飲める環境を整えてあげてください。
犬猫の下痢が発症したらすぐに相談できる病院を探す
動物病院を受診する際には
犬猫の下痢や嘔吐は、「様子見してよいケース」と「なるべく早く受診すべきケース」があります。
犬猫の下痢や嘔吐が起こる病気は、一過性の胃腸炎や大腸炎だけではなく、膵炎、肝炎、パルボウイルスや寄生虫などによる感染性腸炎、腫瘍、腸閉塞、何らかの中毒など多岐にわたります。
「下痢と嘔吐が同時に起こる」こともしばしばあり、より重症度が高い可能性がありますが、必ずしも両方が一緒に出現するとも限りません。
「どうすべきか…」と悩んだときは、動物病院にすぐに相談できる病院を探すことが大事です。
動物病院では、問診や視触診、レントゲンや血液検査など原因を探るためさまざまな検査が行われます。
便や吐しゃ物の状態も診断を迅速に進めるためのポイントになりますので、動物病院受診の際は持参することをおすすめします。
便の形状・柔らかさ、吐しゃ物の状態を獣医師が確認できるように持参しましょう。
水分が浸透しないラップ・アルミホイルで軽く包み、それを容器やビニール袋に入れて持っていくと良いです。
便は病院に行く直前の比較的新しいものを1~2センチ程度の少しだけでもいいので持っていきましょう。猫砂やシートに完全に吸収されてしまうと検査が難しくなるのでご注意ください。
治療方法は、下痢の原因によって異なります。適切な対処ができるように、やはり獣医師から診断してもらうことが大事です。
内服薬や食事量の調整など短期間で治ることも多いですが、重い病気が潜んでいるときは治療が長期にわたることもあります。
「なかなか治らない」、「重症」の場合は、詳しい検査・治療が必要
急性膵炎や急性肝炎による嘔吐や下痢を呈する場合、命にかかわるくらい重症になることもあり、入院治療が原則必要となります。点滴治療や栄養療法をしっかりと行ってくれる、入院設備の整った動物病院を受診してください。
また、慢性下痢に対しては「うちの子はお腹が弱い体質だから…」といって、下痢止めを漫然と使用していても改善しないことが多いです。便遺伝子検査やホルモン検査、アレルギーを考慮した食事療法、腸全層生検、内視鏡検査など、踏み入った検査・治療を視野に、セカンドオピニオンを受ける判断も重要です。また、健康診断や下痢での受診時に、アルブミンが基準値よりも低めの数値になっている子は、経過が要注意である場合があります。
まとめ
犬猫に下痢が起こったら、まずは愛犬の様子をじっくりと観察してみましょう。
ぐったりしていたり、下血を伴ったりしている、下痢と嘔吐が同時に起こっているときは緊急性が高い可能性もあり、それ以外でも早めに治療をした方がいい病気が原因のこともあります。
独自の判断で様子見をしていると、重大な病気を見逃すかもしれないので注意が必要です 。
下痢の原因は多岐にわたり、市販の薬やサプリメントを安易に飲ませない方がいいケースもあります。
病院受診により適切な治療を受けることが早期治療のためには必要です。
また、下痢の原因究明のためには、話のできない動物の代わりに飼主様からの問診が重要となってきます。
下痢の頻度や体調、普段の行動や気になる点などを日頃から観察・記録しておくことをおすすめいたします。
監修者 竹原獣医科医院 院長
2009年~2011年 日本小動物獣医師会 理事
2011年~2019年 川崎市獣医師会 会長
2019年~ 川崎市獣医師会 顧問
所属:比較眼科学会
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