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犬や猫はなぜ誤食をする?主な原因や緊急性の高い症状、愛犬・愛猫の命を守るための対策を解説します2025.06.13

本来食べものではないものや、犬と猫にとって危険なものが体内に入ることを“誤食・誤飲”と言います。

誤食・誤飲の瞬間を目撃したり、犬や猫の近くに噛み砕いた残骸があると「もしかして飲み込んだかも…!?」と焦りますよね。

誤食や誤飲によって体が傷つけられることもあり、毒性のあるものが引き金となって命を脅かすリスクもあるため、ペットを飼っているなら絶対に避けたいことです。ただ、好奇心から、さまざまな物を口に入れる性格の犬や猫も多いです。

異物を飲み込んだ後は、少しでも早めの処置が命を助けるカギとなることも少なくありません。

愛犬や愛猫の誤飲に気づいた際、どうするべきなのでしょうか。

今回は、犬や猫の誤食について、原因や緊急性の高い症状の見分け方、予防方法などを詳しくお伝えしていきます。

目次

【意外と知らない】犬と猫が誤食・誤飲する主な原因とは?

まず、犬や猫の誤食・誤飲の主な原因をご紹介します。

好奇心から口に入れてしまう

犬や猫は、シニア期に突入すると比較的落ち着きますが、子犬や子猫の時期は好奇心旺盛。いろいろな物に興味を持ち、遊びの延長線で誤食しやすいです。

「これは何?」と興味を持つと、ニオイを嗅いだり口に入れたりなどしてしまい、誤食につながることがあります。

食欲が旺盛

人間の食べ物のなかには、犬や猫にとっては毒となるものが結構多いです。しかし、ペットは「食べたら危険」ということが分かりません。

人間の食べ物の良い香りにつられて、飼い主様が目を離した隙にパクッと食べることもあります。

また、飼い主様のなかには「犬や猫が食べると危険なもの」を把握できず、食べたそうにしているペットに食べさせてしまうケースもあるようです。

「取られたくない」と飲み込む

ペットが危ないものを口に入れそうになると、飼い主様は誤食を防ごうと急いで取り出そうとします。しかし、動物たちは飼い主様の行動の真意が分かるわけもなく、「取られたくない!」「じゃまをしないで!」とゴクリと飲み込むこともあります。

退屈しのぎ、ストレスから誤食することもある

留守番などで暇なとき、退屈しのぎに布地やペットシーツを食べることも少なくありません。

歯の生え変わりのときは、口中の痛痒い違和感を紛らわそうと何かを噛んでいる最中に飲み込んでしまうこともあるでしょう。

また、日常的に何らかのストレスがあり、気を紛らわす意味合いで物を噛んでいるうち誤食につながるケースもあります。

食べられるか確認中、間違って食べる

動物の本能的な行動で「コレは食べてもいいのか」を自分で調査しようと、口に入れることがあります。大きさや素材によっては、そのまま誤って飲み込むこともあるのです。

緊急度別|犬・猫の誤飲・誤食時に起こる症状の見分け方

誤食や誤飲は、ときに犬・猫にとって重大な症状を引き起こす可能性があります。

すぐにでも動物病院受診を!緊急性の高いケース

誤食をした瞬間を見てしまった、食べかけの片割れがあったなど“誤食”が明らかなときもあるでしょう。

飲み込んだものが
・画鋲、くぎ、針、ピン、竹串
・糸や紐など長いもの
・タバコ、ボタン電池・人間の薬
・漂白剤や乾燥剤、保冷剤、洗剤
・玉ねぎ、チョコレート、ぶどう
・観葉植物
などの場合、かなり危険です。

胃腸や食道、内臓を傷つける可能性、中毒や炎症を起こす可能性などさまざま考えられます。

特に、
・ぐったりと寝込んでいる
・よだれや嘔吐、下痢を繰り返している
・震えている、けいれんを起こしている
・荒い呼吸で苦しそう
・血便が出る
・食欲がなくなった
など明らかな異変があるときは緊急性が高い症状です。

飲み込んだものによっては、消化器官を傷つけたり、腸閉塞などを起こしているかもしれません。様子見をせずに、早めに動物病院を受診し、獣医師による適切な検査・処置をすることが重要です。

様子を見つつ、できるだけ早めに受診をした方がよいケース

誤食の瞬間を飼い主様が目撃し、直後に飲み込んだ物がそのままの形で“嘔吐”によって全て排出されるケースもあるでしょう。

その後の犬や猫の様子について、「元気も普通通りだし、大丈夫そう」と目に見えて異常がないこともあるかもしれません。

「中毒性のある物質ではない」「尖ったものではない」などは、少し様子を見ることもできます。

ただ、注意したいのは「飲み込んだものをすべて吐いた」のではなく、一部しか吐いていない可能性です。飼い主様が誤食を一部始終見ているとも言い切れず、吐いたものが“全てではない”ことも考えられます。

しかも、誤食・誤飲後の症状の出方は時間差があり、直後に症状が起こらず、数日経ってから症状を見せることもあるのです。

「誤食したけれど元気」と自己判断した結果、数日後に重症となる可能性も少なくありません。誤食・誤飲したことが分かっている場合は、様子見が命取りになる可能性もあります。

飼い主様の自己判断で受診を保留せず、早めに動物病院に行き獣医師に相談することが大事です。

知っておきたい犬や猫の誤飲・誤食予防のための基本対策

犬や猫と共に暮らしているうえで、誤食のリスクは必ずあります。そのリスクを完全に防ぐことはできませんが、飼い主様の予防対策次第では軽減することは可能です。

愛犬・愛猫を守れるのは飼い主様だけです。日常的に誤食対策となる基本的な行動をおさえ、誤食を予防しましょう。

犬や猫にとって危険な物を置かない

犬や猫の生活範囲に、危険な物を置かないことが鉄則です。テーブルの上に無造作に出しっぱなしなどは止めましょう。

ある程度の高さに収納できれば、犬の場合は手が届かず、安全です。ただ猫の場合、棚の上、タンスの上など高いところもジャンプして移動範囲が広め。誤食の危険性がある物は、重めの引き出しや蓋つきの容器、簡単に開けられない収納にしまっておきましょう。

犬や猫にとって危険な食べ物を知っておく

人間の食べ物のなかには、犬や猫にとってNGなものも多いです。中毒を起こすリスクがある食べ物の代表をいくつかご紹介します。

【ぶどう、レーズン】
急性腎障害を起こし、場合によっては死に至ります。

【チョコレート、コーヒー、ココア】
カフェイン、テオブロミンなどの成分が中毒を引き起こします。下痢や嘔吐だけで済むこともありますが、ひどければ痙攣や意識障害、死に至ることもあります。またカカオ成分が強いものの方が中毒性が高いと言えます。

【ネギ・タマネギ類】
赤血球が破壊され、貧血症状を起こします。ネギを直接食べなくても、ネギが入ったスープを飲んでも中毒症状につながることがあります。

【キシリトール】
嘔吐や脱力感からのふらつきが起こり、低血糖、意識障害、肝機能障害のリスクが高まります。

散歩中は犬から目を離さない

好奇心旺盛な性格の犬の場合、散歩中、飼い主様が目を離した隙に「拾い食い」をするケースがあります。

公園や草むらなどは、危険で有害な物が落ちていることが多いです。目を離さないように気を配りましょう。リードを短めに持つと、地面に顔を近づけられないので誤食防止になります。

また、ゴミの多い場所は特に誤食・誤飲のリスクが高まるため、散歩ルート選びにも配慮することが大事です。

猫は完全室内飼いをする

屋外と屋内を自由に出入りできる猫の場合、飼い主様の知らない場面で誤食や誤飲をする可能性が高まります。完全室内飼いで目の届くところで生活させることで、誤食・誤飲のリスクを大幅に減らせるでしょう。

おもちゃを選ぶ際は安全な物を

遊びの最中に、おもちゃを誤って飲み込むケースがあります。

「犬用・猫用」で市販されているおもちゃにも、危険なものが数多くあり、当院でも数多くの誤飲事例があります。犬の場合は、長時間かけておもちゃをばらばらに破壊して飲み込む例が多いですが、時にはボールなどとても飲み込めそうもないようなものまで誤飲することがあります。口にすっぽりと収まる物は、飲み込めると思っておいた方が良いでしょう。

猫のおもちゃで注意したいのは、小さなネズミのついたものや、猫じゃらしの先端部分です。夢中に遊んでいるうちにもぎ取って飲み込んだり、遊んだ後に置いておいたおもちゃをこっそりといたずらして飲み込んだり、猫でも特に多い異物の一つです。

しつけでコントロールできるようにする

誤食しそうなタイミングで、「ダメ!」「いけない!」「ノー!」など飼い主様の指示に従えるようにしつけをしておくと安心です。食べてもいいもの、食べてはいけないものを区別できるようにすれば、誤食のリスクは減らせるでしょう。

家族みなさんで“誤食”について知る

犬・猫の誤食は、生活環境を見直すことで軽減できます。リビングでペットを飼っているご家庭も多いかと思いますが、テーブルに薬やタバコ、チョコレートなどをついつい置きっぱなしにするケースもあるでしょう。

愛犬・愛猫の命を守るため、家族みんなで片付けを徹底させることが大事です。

留守番はケージで過ごさせる

子犬や子猫は「食べられるもの」がまだ分からず、何でも口にしがちです。飼い主様がずっと監視できれば誤食のリスクも減りますが現実的には難しいでしょう。

特に、留守番の時間が長い場合、飼い主様不在時に誤食をするリスクがかなり高まります。そこで、留守番時だけでもケージで過ごさせることも誤食のリスクを減らせます。

また、ペットシーツの誤食にも注意が必要です。

留守番中の「不安」や「暇つぶし」などでびりびりと破いて口にするのは、子犬時代によく見られる行動のひとつ。ペットシーツには、水分で膨らむ成分が含まれているため、多量に飲み込んだ結果、稀ではありますが体内で詰まりを起こすこともあります。

ペットシーツの誤食対策として「メッシュタイプのトイレ」にすることもおすすめです。

ペットの安全を守るために|誤食・誤飲した際の動物病院との連携方法と注意点

ペットの誤食や誤飲が発覚すると、飼い主様は慌ててしまいます。まずは冷静な行動をとり、動物病院と連携しながら愛犬・愛猫を守ることが大事。誤食の際の注意点をご紹介します。

無理に吐き出しさせない

まず大事なのが“無理に取り出そうとしない”ことです。

犬や猫の誤食の瞬間を目撃すると「ダメ!」と飼い主様は慌てます。しかし、いきなり口内に飼い主様の手が入ることで、犬や猫達は「取られる」と勘違いし、飲み込むことがあるため注意しましょう。

また、すでに飲み込んだ場合でも、自己流で嘔吐させようとするのは大変危険です。

尖ったものなどの誤食は、「嘔吐させよう」と無理な対応で器官を傷つけることもあります。それに、飲み込んだ物がさらに奥へと追いやられ、詰まりがひどくなることも。

余計に犬・猫の苦しみが強まらせて命を脅かす可能性も考えられるので早めの動物病院受診が大切です。

誤食・誤飲したものの情報

犬や猫が飲み込んでしまった物に関して、
・成分
・大きさや形
・飲み込んだ量
・名前(商品名)
・吐いたもの
・便
など情報をできるだけ詳しく獣医師に伝えることが大事です。

飲み込んだ物と同じ物(食べ残しや箱、パッケージなど)を持参すると、診断しやすくなります。

誤食や誤飲後の様子をまとめておく

誤食・誤飲した時間や、起こった症状を時系列でまとめて診察時に伝えましょう。飼い主様の細かな情報が多いほど、診察や処置に大きく役立ちます。

犬や猫の自宅での様子を写真・動画で撮影しておくのもおすすめです。

異物誤食の治療は内視鏡のある医院で

催吐処置

動物病院では、さまざまな検査をしてから処置を進めます。そしてまず行われることが多いのは、吐かせることです。
誤食した物にもよりますが、誤食後の時間経過がそれほど経っていない場合は「催吐処置」といって、薬によって吐かせることができるかもしれません。当院では注射による催吐処置を実施しております。それでも嘔吐できない場合は、点減薬での催吐処置も行っております。これらで多くの場合は催吐可能ですが、猫の場合は催吐が難しいことが多いです。

また、異物の種類によっては催吐が適切ではない場合があります。

内視鏡による摘出

催吐できない場合、または催吐に適していない異物の場合、内視鏡で内部を見ながら取り除く処置をすることも可能です。当院では必要に応じて、早急な内視鏡による異物摘出処置を実施しております。処置は全身麻酔となります。

誤食、誤飲で動物病院を受診する際は、内視鏡のある動物病院に行くと安心です。

内視鏡摘出が不可能な場合、異物が腸にある場合は

それでも取り出しが難しければ、胃洗浄や外科手術などの治療が選ばれることもあります。異物が胃にあるうちは胃切開手術となります。しかし異物が胃を通過して小腸に到達し、そこで腸閉塞を起こした場合、腸切開手術が必要となり、犬猫への負担はさらに大きなものとなります。特に腸閉塞により腸が壊死するケースもあり、命に関わる事態もあり得ます。その場合は腸切除吻合手術が実施され、入院目安はおよそ1週間、費用も高額となるでしょう。

当院で特に多い誤食・誤飲

当院には、犬猫の誤食・誤飲の事例が数多く来院します。その中でも特に多いもの、注意していただきたいものをご紹介します。以下のものは実際に当院で見られたものですので、「こんなものもあぶない!」ということを知っていただけたらと思います。
※ここでは中毒性の食べ物は除きます。

・材質により好むもの
ex.ビニール袋、紐や糸、ウェットシート、粘着テープ、段ボール、
ジョイントマットのつなぎ目の凸部など
・薬物
  ex.人の薬、ネズミ駆除薬、肥料など
・小物や部品類
ex.縫い針、食パンの留め具、リップクリームのキャップ、洋服のボタン、
カイロ、首輪の一部など
・人の匂いのついたもの
ex.靴下、生理用品、髪留め(シュシュ)など
・布製品
ex.タオル、スリッパ、クッションのかざりなど
・食品関連
ex.ラップ、竹串、お菓子のパッケージ、鶏の骨、梅干しの種など
・おもちゃ
ex.ネズミ型の部分、猫じゃらし、破壊された部品、
ボール、中が空洞で凹むゴム製おもちゃなど
・砂 砂利 石

危険な予兆がある

誤食・誤飲で来院する犬猫たちには、ほとんどのケースでその予兆があります。
普段から何かをずっとかじっていて執着していたり、過去にも何かを飲み込んだことがある場合がほとんどで、癖になっているのです。誤食癖が現れるのはほとんどが1歳未満で、シニアになってからいきなり誤食癖がつくのは稀です。
「そういえばよくウンチから異物が出てきていたんです!」
「いままで多少のものは飲み込んでも問題なかったら、大丈夫だと思っていた…。」
「いろいろなものを壊して遊んでいたんです。」
「うちの子はビニールを齧るのが好きみたい…。」
こんな声がよく聞こえてきます。もし心当たりの飼い主様がおられましたら、今すぐに誤食・誤飲の対策を行ってください。

まとめ

犬や猫の誤食に関する“ヒヤリ”の事例は結構多いです。動物病院でも、「誤食をしてしまった」という受診は珍しくありません。

人間と一緒の環境で暮らす犬や猫にとって、誤食・誤飲はときには命にかかわるリスクがある危険な行動のひとつです。誤食で体内に入った異物が胃や腸を詰まらせることや、尖った物なら器官を傷つけるかもしれません。成分によっては中毒を起こします。

人間にとっては美味しい食べ物も、犬や猫には重篤な症状につながることもあるのです。

ペットの誤食を見たり、「誤食したかもしれない」という可能性があるときは、その後の処置を考えると内視鏡のある動物病院に早めに相談することが大事です。

川崎市の竹原獣医科医院にお気軽にご相談ください。



監修者

竹原 秀行

竹原獣医科院 院長

竹原 秀行
2019年~ 川崎市獣医師会 顧問
2011年~2019年 川崎市獣医師会 会長
2009年~2011年 日本小動物獣医師会 理事

所属:比較眼科学会

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