犬や猫の健康診断をこれから考えている方、もう受けた方へ~その重要性と、検査結果の読み方~2024.11.11
近年、良質なペットフードが増えたことや、医療や薬の進化などによって、ペットの寿命がだいぶ延びてきました。家族のように大切に思っているからこそ、いつまでも長生きして欲しいと思いますよね。
でも、元気そうに見えている犬や猫たちも、必ず寿命に近づいていきます。犬や猫は野生の本能から“弱さ”を見せないため、実は元気そうに見えているときも病気を発症しているケースも少なくありません。
そこで大切なのが健康診断です。
定期的に健康診断を受けることは、愛犬や愛猫の健康を守ることや飼主様の安心感、そして早期治療へと結びつきます。
今回は、動物たちの健康診断の重要性や検査結果の読み方について詳しくお話していきます。
Contents
犬と猫の健康診断の重要性とは?
犬や猫の健康診断は強制ではなく、受けさせるかどうかは飼主様次第です。
「具合が悪そうな感じがしないのに健康診断を受けた方がいいの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。でも、結論から言うと「犬や猫の健康診断はとても重要」です。
まずは、犬や猫にとっての健康診断の重要性をご紹介していきます。
犬・猫は自分から不調を話せない
言葉が話せない犬や猫は「具合が悪い」「身体が痛い」と飼い主様に訴えかけることもありません。
しかも、野生時代で生きていた名残から、本能的に“痛みを隠す”という習性があります。これは、自分が弱っていることを敵に知られると命を脅かすリスクに繋がるという認識からです。そのため、犬や猫は多少の苦しみは我慢してしまう傾向にあります。
何かしらの症状が現われて、飼主様が「病気かも?」と気になったときはすでに進行しているケースも珍しくありません。
犬や猫ができるだけつらい思いをしないために、健康診断で健康状態をチェックしておくことはとても大切です。
また、健康診断の結果、特に異常がなければ、飼主様の安心感にもつながります。
犬・猫の成長スピードは人間と比べて早い
犬や猫の平均寿命は人間と比べると短いです。つまり、人間と比べるとかなりのスピードで年齢を重ねていくことになります。
人間にとっての“1年”が、犬や猫にとっては数年に値するため、つい数年前に子犬として迎え入れた…と感じても、数年後にはあっという間に中高年となっているケースもあります。
いつまでも子犬や子猫のように可愛い様子を見せてくれる犬や猫も、実はシニア期に突入し体調が変化しているかもしれません。
犬や猫も人間と同様に、シニア期に入るとさまざまな病気のリスクが高まります。
できるだけ健康で長生きしてもらいたい、高齢になっても負担を取り除いてあげたいと思いますよね。
いずれやって来るシニア期のため、定期的な健康診断は重要です。
早期発見できれば早期治療ができる
どんな病気も“末期”では治療の選択肢が狭くなります。
健康診断で初期症状を見つけられれば、早期的な治療をすることはもちろん、治療の選択肢が広がります。重症化を防ぐことができれば、愛犬と愛猫の負担を取り除いてあげられることにもつながるでしょう。
また、「まだまだ若いから大丈夫」と犬や猫の年齢が若いと油断しがちですが、年齢問わず病気のリスクはあります。
血液検査などで分かることもあるため、健康診断は病気発見のためには効果的です。
健康診断の種類と主な検査項目
“健康診断”の内容は、犬や猫の年齢、現在の体調や飼主様のご不安ごとなどにより異なってきます。詳しくは獣医師に相談しながら、飼主様が選択していくことになるでしょう。
そこで、どんな検査項目があるのかについてご紹介していきます。
身体検査(視診・触診)
獣医師が直接、犬や猫の身体をチェックしていきます。
目や口の中を確認する“視診”では、目や歯の何らかの異常をチェックします。
身体全体を触って確認する“触診”では、しこりの有無が分かります。関節の状態なども確認していきます。直接触れることで「太り過ぎ・痩せすぎ」等も確認できます。
また、聴診器をあてて心音の異常もチェックします。
尿検査や便検査
当院では尿、便を飼い主様にお持ちいただければ、即日検査可能です。
なるべく新鮮なもの(尿は冷蔵保存)を数時間以内にお持ちください。尿に関しては院内で採尿した方が確実な検査が可能ですので、院内採尿をおすすめしています。
尿検査は一般性状検査と、沈渣の顕微鏡検査を実施しています。顕微鏡検査ではAIを用いた最新の自動撮影、異常検出システムを導入しております。また早期の腎不全を診断するために、尿蛋白クレアチニン比の測定も積極的に推奨しています。 便検査は一般的なものから、ジアルジア抗原検査や、各種遺伝子検査(ウイルス、細菌、原虫類)が可能です。遺伝子検査は後日報告となります。
血液検査
血液検査は、春と秋の年に2回、検診キャンペーンとして通常価格よりも割引して実施しています。
当院では主に、貧血や脱水などを見る血液学検査、肝臓、腎臓、膵臓、中性脂肪や血糖値などの内臓機能を見る生化学検査、その他、心臓病やホルモン病、炎症像を評価する項目を、必要に応じて組み合わせて実施することで、病気がないかを幅広く調べるようにしています。
わんちゃんは春にフィラリア予防で採血する機会が多いかと思います。
その際には皆さまに健診としての血液検査をお勧めしていますが、その半年後にも秋健診期間を設けております。特に5歳以上の中年に差し掛かる犬猫には、最低でも1回/年、できれば2回/年の血液検査をお勧めしています。 また猫ちゃんは来院頻度が少なく、健診が出来ていない子が多くいます。猫ちゃんにも早期発見早期治療ができる病気が沢山あります。わんちゃんと同じように、健診の習慣をつけていただくことをお勧めします。
健康ドック(1日検診)
身体検査、血液検査、尿検査、便検査では分からない異常も多くあります。
当院では、レントゲン検査や、心電図検査、眼科検査をセットにした健診コースをご用意しています。また、その子に合わせたかたちで、超音波検査や内視鏡検査を実施することも可能です。予約制となりますので、当院までお問い合わせください。
健康診断を受けるタイミング
「犬や猫の健康診断はいつ受けたらいいのだろう?」と受けるタイミングや費用感は気になるところですよね。
年に1~2回の健康診断がおすすめ
犬や猫の年齢でも異なりますが、最低でも1年に1回の健康診断がおすすめです。
犬や猫の年齢が若いからと言って病気にならないわけではないため、1歳くらいからでも健康診断は重要とも言えます。
また、一般的に7歳を迎えるころには犬も猫もシニア期へ突入していく時期。これまで元気だったワンちゃん・猫ちゃんも、少しずつ体内も見た目も老化が現われていく頃でしょう。
シニア期になると病気のリスクも高まるため、半年に1回程度は健康診断を受けることが大事です。
お伝えしたように、犬や猫は人間よりも早く年齢を重ねる動物。人間にとっての“半年”も、犬や猫にとっては人間にとっての1~2年相当にあたるため、シニア期に入ったら1年に2回くらいは健康診断を受けることをおすすめします。
おすすめの動物病院と診療の予約方法
次に健康診断でおすすめの動物病院や予約についてお話していきます。
健康診断でおすすめの病院とは?
特に春はフィラリア検査で採血を行う際に、血液検査での健診を行っている病院が多くあります。かかりつけ医がある場合は相談してみるといいかもしれません。
ただ、健康診断の結果、異常が見つかって治療を行う可能性を考えると、さまざまな病気に対応できる獣医師が複数いる動物病院、設備の整った動物病院はおすすめできます。 当院は、外科や内科、皮膚科、歯科、眼科など総合的な診療に対応し、内容によっては、専門医をご紹介できる体制も整っています。健康診断では今後の記録として健康診断書も作成しておりますので、お気軽にご相談ください。
健康診断は事前に予約をしよう
健康診断は、基本的に事前に相談しながら予約を取るケースが多いです。
身体検査と血液検査はそれほどの時間がかからないのでその場で実施してくれる病院が多いでしょう。(結果は後日となる場合もあります。)しかしレントゲン検査など画像診断を含むと半日くらいかかることもあります。
健康診断の内容によって「ごはんを1食抜く」「いったん預けて飼主様に迎えに来てもらう」など病院によっての注意ポイントもあるでしょう。 予約の有無についても動物病院ごとに異なるため、まずは問い合わせをして具体的な確認をすることが大事です。
まとめ
犬や猫の年の取り方はとても早く、人間と比べて1年が数倍にも換算することができます。いつまでも可愛らしい存在の愛犬・愛猫も、実は年齢からくる病気を発症している可能性もあります。
具合が悪くなくても1年に1~2回はワンちゃんや猫ちゃんの体のチェックをする意味で健康診断を受けることをおすすめします。
早期発見・早期治療で、愛犬や愛猫が長生きできますように…。
当院でも、ワンちゃんや猫ちゃんの健康診断を行っています。飼主様のご不安もお聞きしておりますので、詳しくはお気軽にご相談ください。
監修者 竹原獣医科医院 院長
2009年~2011年 日本小動物獣医師会 理事
2011年~2019年 川崎市獣医師会 会長
2019年~ 川崎市獣医師会 顧問
所属:比較眼科学会
-
2024.12.03
犬や猫が嘔吐したら病院に行くべき?嘔吐の種類や違い、検査の重要性について解説します
-
2024.11.13
【手術症例】下顎皮膚腫瘍(イボ) シーズー系MIX 12歳
-
2024.11.13
当院の血液・尿の検査項目の解説
-
2024.11.11
犬や猫の健康診断をこれから考えている方、もう受けた方へ~その重要性と、検査結果の読み方~
-
2024.10.02
犬猫が下痢をしているのは何の病気?
病院に連れていくべき深刻な症状やすぐにできる対処方法を解説 -
2024.08.09
犬猫によく起こる「外耳炎」とは?外耳炎が起こる背景と治療法、発症を防ぐための“予防策”もあわせて解説します
-
2024.08.07
避妊手術 当院のこだわり「一生に一回の手術だから…安さや速さではなく、“安心とやさしさ”を。」
-
2024.08.07
去勢手術 当院のこだわり「一生に一回の手術だから… 安さや速さではなく、“安心とやさしさ”を。」
-
2024.07.31
犬猫の耳血腫は耳が腫れる病気?耳の形が変わってしまう?症状や原因、キレイな形で治す方法などを解説します
-
2024.06.05
犬に“イボ”を発見したら…治療すべき?犬の皮膚にできるイボの原因や種類、主な治療法などについて詳しく解説します