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猫も人間も恐怖の感染症“SFTS”~マダニが媒介するウイルスや対策などを詳しく解説2025.12.01

近年、日本で年間100人以上も感染者が報告されているSFTS(重症熱性血小板減少症候群)。マダニを介して感染する深刻な感染症で、多くの注意が呼びかけられています。

マダニは動物の血を吸って生息しており、その過程でウイルスを媒介、刺された動物が感染症を発症します。

ペットの猫がマダニに刺されて感染し、その猫から人間に感染するケースも数多く報告されています。

また、飼い主様が意図せずに屋外からマダニを家に持ち込んでしまい、感染する事例も多く、特に秋にかけて注意が必要です。

今回の記事では、猫とマダニを通じてリスクがある

SFTSについて、その危険性や対策などを詳しく解説していきます。

猫も人も要注意!マダニが媒介するSFTSとはどんな病気?

マダニによるSFTSは猫だけでなく人間にも注意が必要な感染症です。

マダニを介して感染する「SFTS」

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、ウイルスを保有したマダニに噛まれて発症する病気です。

主な感染ルートは、

・SFTSを保有したマダニに刺される

・SFTSを発症した動物と触れ合う

などです。

マダニって?

“ダニ”と聞いたとき、家のなかにいる肉眼で見えない小さい生物を想像する人も多いのではないでしょうか。

家のなかに潜む「チリダニ」や「ヒョウダニ」はかなり小さく人の目では見えず、布団やカーペットなどに生息して主にアレルギーの原因となっています。

対してマダニの生息場所は屋外で、草むらや山林、畑、公園など草が多い場所で全国的に見かける生物です。

体長3~5㎜ほどのマダニの成虫はで肉眼で見える大きさ。フタトゲチマダニやキチマダニなど複数の種類が存在しています。

マダニは人間や猫、犬、ネズミ、ウサギなど血を吸い、吸血後に満腹になると風船のような膨らみを見せ1~2㎝程度まで大きな姿になります。

どうやって動物の血を吸うの…?

マダニは草蔭などで動物が通るまで待機し、通りかかった動物の身体に移動するように付着します。基本的に飛んだりしませんが、マダニが待機している葉っぱに触れた瞬間に“しがみつかれる”ことで吸血されるのです。

人にも感染するSFTS

感染経路は「SFTSウイルスを保有しているマダニに咬まれること」です。

マダニが生息する草むらなどに行く機会がない人でも、屋外で行動する猫を飼っていれば「マダニに噛まれてSFTSに感染した猫」から感染するリスクがあります。

特に猫は人間よりもSFTSを発症しやすい動物で、その猫自身がマダニに噛まれなくても外出時に「他の野生猫」から感染することがあります。

それが飼い主へと感染することもあるのです。

また、野生猫に直接触れるのは大変危険です。厚生労働省の発表によると、野生の猫との触れ合いで噛まれてSFTSを発症した事例もあります。

さらに、SFTSを発症している動物の体液(唾液など)に触れたことが感染原因となる可能性もあるため注意が必要です。

SFTSにかかるとどうなる?主な症状と致死率について

SFTSは致死率の高い感染症です。次に具体的な症状などを解説していきます。

主な症状とは?初期から重症化までを解説

潜伏期間

SFTSは「SFTSウイルス」が原因で発症します。しかし、感染してもすぐには症状が見られず、「マダニに噛まれたかも…」と思っても無症状のまま一定期間を過ごすことになります。

一般的な潜伏期間は6~14日間とされているため、人によってはしばらく後に異変に気付くことが多いです。

マダニに噛まれるような心当たりがなくても、1~2週間以内に原っぱや林など草の多いところに行った記憶があれば、SFTSの感染する可能性も考えられます。

また、潜伏期間を6~14日ほどとしていますが、免疫力が下がっている場合なども発症の時期に個人差があります。

初期症状

SFTSの代表的な症状は、

・発熱

・倦怠感

・食欲低下

・消化器症状(嘔吐、吐き気、下痢、腹痛など)

です。

初期症状は風邪とも似ていることから、見過ごされるケースもあります。

日常的に不調がある人の場合、「いつものことだ」と体調悪化も軽視しがちですが、高齢者や基礎疾患を持つ人は注意が必要です。

中期症状

初期症状に気づかず進行すると、次第に鼻血や内出血、皮下出血、歯茎の出血など“血が出やすい状態”となります。血液検査をすると血小板、白血球にも影響を及ぼしていることが多いです。

高熱が持続してひどい場合には、意識障害などを起こすケースもあります。

明らかに体調悪化が進んでいると感じたら迅速な診断・治療が大切です。

重症化したら…

初期や中期の症状を見過ごして重症化した場合、多臓器不全を起こして命に関わることもあります。肝機能や腎機能が低下し、神経系の症状も目立ち、昏睡状態に陥ることもあります。

症状が進行するほどに生存率が下がるため、できるだけ初期症状の時点で早期発見し、治療を進めていくことが重要です。

致死率は…

人間がSFTSに感染した場合の致死率は高く30%くらいとされています。感染者数は、集計を始めた2013年以降は年々増えている傾向で、2025年9月7日までの報告では152人となり、過去最多となりました。

また、動物のなかでも猫は感染しやすく、60%ほどの致死率とも言われています。症状が出始めてから短期間で重症化し、命に関わる可能性も高いため、「感染させないこと」の対策が非常に重要です。

マダニの活動期とSFTS感染リスクが高まる季節を知ろう

マダニは暖かい時期に活発に動く生物で、SFTSの感染リスクが特に高いのは秋頃からです。

マダニの活動期とは

マダニは春から秋頃の暖かい時期に活発に活動する生物です。湿った環境を好み、特に5~8月くらいが活動のピークとなっています。

繁殖活動が増えるのもこの時期です。吸血して栄養を補給したマダニが繁殖活動を行い多くの卵を産みます。そしてそれが成長して個体数が増えるのが秋頃です。9~10月くらいには、草むらや山林、農地、河川敷などで多くのマダニが活動していると考えられます。

草木が多い森林などで生息しているのはもちろんですが、最近では公園など身近なところでも確認されるようになってきました。

SFTSの感染リスクが高い季節

SFTSの感染リスクが高いのは“マダニの活動期”とほぼ一致しています。前述したように、暖かくなって活動が盛んになるにつれて繁殖活動もピークとなり、結果的にダニの個数が増えるのが夏の終わりから秋頃にかけてです。

さらにその時期には秋の行楽シーズンや農作業など屋外での活動も増えるため、人とマダニが接触する機会も増え感染リスクが高まります。

秋は、屋外に自由に出入りできる猫や野良猫もマダニとの接触リスクが高まる時期です。

ご自宅で飼っている猫が外出時にマダニを知らず知らずのうちに連れ帰る可能性、あるいはマダニに噛まれた野良猫に触れたときに感染する可能性もあります。

屋外から帰宅したペットの猫がマダニを持ち帰ることで飼い主家族がSFTSに感染するかもしれません。

SFTS感染を防ぐために飼い主が実践すべきダニ対策と予防法

人間も猫も致死率が高いSFTS。感染させない予防や、万が一マダニと接触があったときの正しい対策を知識としておさえておくことが大事です。

屋外から帰宅した猫の身体をチェックする

外出を自由にできる猫の場合、帰宅した際に身体にマダニが付着してないかチェックしましょう。特に、わきの下や耳裏、股などに潜んでいないか念入りに確認することが大事です。

帰宅後にブラッシングを習慣化することで発見しやすくなります。

また、ブラッシングはマダニ発見の目的だけでなく、スキンシップにもつながり、愛猫との絆を深める機会にもなるのでおすすめです。

完全室内飼いを徹底する

マダニは草が生い茂った環境に潜んでいるため、完全室内飼いにすることでSFTSの感染リスクを大きく減らせます。

また、完全室内飼いで猫を外に出さないことは、交通事故やほかの猫との喧嘩によるケガなどの予防にもなります。

マダニが付着したら動物病院に

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吸血したマダニは大きい姿となるため、肉眼でも発見しやすいです。そのため、猫の身体に張り付いたマダニを見るとびっくりするかもしれませんが、無理に取るのは絶対に避けましょう。

吸血中のマダニは簡単には取れず、無理やり取ろうとしてマダニの口器が皮膚内に残り、それが重症化リスクを高めることもあります。

動物病院では専用の器具で慎重に除去してもらうことが可能です。

不安なことも相談できるので、発見したら早急に動物病院を受診しましょう。

猫に引っかかれたときは傷口をすぐに洗う

猫がSFTSに感染していると唾液や血液などから人に感染することが数多く報告されています。

猫に引っかかれた、猫の傷に触ったなどの場合、血液や傷口から感染しないようにすぐに流水で洗浄しましょう。

その後、発熱など体調不良が現れたときは医療機関を受診して医師に相談することが大事です。

マダニ予防薬を使う

猫を飼っている人のなかには「うちは完全室内飼いだから大丈夫」と考えるケースも多いようです。しかし、飼主様がマダニを持ち込んだことで飼い猫がSFTSに感染することもあります。

そこで大切なのがダニ予防薬です。

市販でもありますが安全性や効果の観点から動物病院専用の駆除薬をおすすめします。

飲み薬だけでなく、首の後ろに滴下するスポットタイプや首輪タイプなどがあるので、医師と相談しながら投薬ができます。

マダニはもちろん、ノミなどの対策も可能です。

動物病院なら愛猫の健康チェックも兼ねて確実な投与が可能なので安心です。

体調不良の猫のお世話時は手袋&マスクをする

猫に発熱や嘔吐、下痢などの体調不良が見られた際には、SFTSなどの感染症の可能性もあります。

感染症は嘔吐物などへの接触で飼主様にも感染することがあるため、猫の嘔吐物・排泄物の処理は手袋やマスクを着用することが大事です。

それらが衣類にも付着する可能性から、お世話後の着替えや石鹸での手洗いもおすすめです。

猫の体調不良が続く場合、SFTSだけでなくさまざまな病気のリスクも高いです。

重症化させないためにも、なるべく早めに動物病院を受診することが大事です。

まとめ~飼い主とペットの健康を守るための対策が大事

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、マダニが媒介となる致死率の高い感染症です。マダニは暖かい時期に活発に動き繁殖活動も増えるため、特に秋頃には個体数の多さから感染リスクがさらに高まります。

猫が屋外でマダニに刺されて感染し、それを飼い主様にうつしてしまうケース、さらに野生猫と接触した際にSFTSに感染するケースなどもあります。

それに秋になるにつれて行楽シーズンとなり屋外での活動も増えるため、人間がマダニを持ち込んでしまってペットの猫に感染させてしまうケースなどさまざまです。

また、猫の身体にマダニを発見したら無理に除去せず、速やかに動物病院で適切に処置してもらうことが大切です。



竹原 秀行
監修者

竹原 秀行

竹原獣医科院 院長

所属:比較眼科学会

2019年~ 川崎市獣医師会 顧問
2011年~2019年 川崎市獣医師会 会長
2009年~2011年 日本小動物獣医師会 理事

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