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犬・猫の白内障はどんな病気?原因・治療法から予防法まで飼主様が知っておきたいポイントを詳しくお話します2025.01.30

瞳のなかが白く濁っているワンちゃんや猫ちゃんを見たことがある方も多いのではないでしょうか。もしかしたら、白内障になっているかもしれません。

白内障と言えば人間でも“老化”によるものとしてご存知の方も多いかもしれませんが、犬や猫でも発症する病気です。

白く濁った瞳をしている犬や猫を見ていると心配ですよね。

今回は、犬や猫の白内障について、病気の概要や原因、治療方法、予防法などについて詳しくお話していきます。

犬と猫の白内障~概要と原因について

はじめに、犬や猫の白内障について、症状や原因などについて見ていきましょう。

犬や猫の白内障はどんなもの?

犬の目の構造は人間ともよく類似していて、

・眼球を守る“角膜”

・眼球に光を取り込む“瞳孔”

・入り込んだ光を絞りこむ“虹彩”

・レンズの役割をしている“水晶体”

・ピントを合わせる“毛様体”

などによって構成されており、これらが適切な光や像を網膜に届けるための役割を果たしています。

このうち、水晶体は本来透明なはずなのですが、何らかの理由によって白く濁った状態になったものが白内障です。

白内障を起こした犬や猫に見られる症状は?

白内障は進行性の病気で、段階ごとに症状の違いや変化が見られます。

初期は、水晶体の一部に白い濁りが見られる程度で、視力への影響はありません。

次第に白い濁りが水晶体のなかに目立つようになり、犬・猫の視覚障害がはじまります。目のぼやけなども出てくるころです。

ただ、ワンちゃんや猫ちゃんは家のなかは動き慣れた場所だと、どこに何があるかを感覚で知っています。そのため、視力が悪くなっているのにも関わらず、あまりぶつかることもないケースもあるかもしれません。

飼主様が視力の悪くなった様子に気づかないこともあるでしょう。

そのうち、水晶体が全体的に白く濁り、視力がかなり悪くなります。物にぶつかったり転んだり、動くのを嫌そうにすることもあるでしょう。声をかけられてびっくりすることや、目が見えない不安で夜鳴きをするケースもあります。

進行が進むと、目の白い濁りは一層ひどくなります。かなり重度になると目の痛みをともなったり、「目が見えない」という大きな不安から、攻撃的な様子を見せたりすることもあります。

犬や猫の白内障…原因は何?

犬や猫の白内障の原因についてご紹介します。

理由①:遺伝性によるもの

白内障にかかりやすい犬種・描種があります。

犬なら、

・トイプードル

・柴犬

・キャバリア

・チワワ

・マルチーズ

・ビーグル

・シーズー

・ヨークシャーテリア

・コッカースパニエル

など…。

猫なら

・ペルシャ

・バーマン

・ヒマラヤン

などです。

「白内障=老化」と位置づけする方も多いかもしれませんが、遺伝が要因となっている場合には1歳、2歳という低年齢で発症するケースも見られ、6歳未満という若年期に発症するものは若齢性白内障と呼ばれます。

そのため、上記のような“白内障にかかりやすい”犬種や描種は、若くても目の様子に気を配っておくことが大事です。

理由②:加齢性によるもの

人間では、加齢とともに起こる確率が高まる白内障。犬や猫でも高齢になって身体が老化したことで、白内障を発症することがあります。

犬や猫は人間よりも小さいことから、可愛らしさが長く続き、年齢の変化を感じにくいですよね。でも、6歳~7歳になるとシニアで身体的な老化が見られるようになります。

加齢性で白内障を発症すると、比較的ゆっくりと症状が進行します。

理由③:糖尿病など“目以外”の病気によって発症したもの

犬や猫が糖尿病で血糖値が高くなれば、合併症により白内障になることがあります。

糖尿病になると100%に近い確率で白内障を発症します。しかも、症状の進行が急速に進むため注意が必要です。

理由④:外傷によるもの

目を何かにぶつけた、目のなかに異物が入った、自分で目を引っ掻いてしまった…などで目にケガをしたことがきっかけで、のちに白内障を引き起こすこともあります。

白内障の症状はどのように進行する?

犬や猫がいったん白内障を発症すると、自然に元通りになることはありません。次のような段階を経て、病状は進行していきます。

初発期

初期は水晶体の濁りは15%に満たないほどで、飼主様が目視で気づくのは難しい時期です。犬や猫も自覚症状がないため、なかなか気づけないかもしれません。

未熟期

濁りが15%を超え、一部の犬猫は見えづらいと感じているかもしれません。飼主様も犬や猫の目の白い濁りに気づけるでしょう。

成熟期

成熟期になると水晶体の濁りがほぼ全体に広がります。視力が少しずつ低下し、物にぶつかることも増えるでしょう。

この時期の終わりになると、視力はほぼ失われている状態です。ただし、光への反応はあります。

過熟期

水晶体の濁りが強くなるうえ、液状化や萎縮が始まります。視力はなくなり、炎症も強まる頃です。

犬と猫の白内障~治療法とは

次に、白内障の治療についてです。

外科的治療~手術

白内障の完治のために最も効果があるのが手術と言えるでしょう。濁った水晶体を取り除き、人工レンズを入れる手術方法です。手術の大まかな手順をご説明します。

  • 角膜切開:手術のために器具を挿入する穴を開けます。
  • 水晶体前嚢切開:白くなった水晶体の中身を取り出すため、水晶体を包んでいる水晶体嚢に窓のような穴を開けます。
  • 水晶体乳化吸引(PEA):器械により水晶体の中身を乳化しながら吸い出します。
  • 人工眼内レンズ(IOL)挿入:中身が吸い出された水晶体嚢の中に、動物専用のレンズを挿入します。
  • 角膜縫合:角膜を縫合します。
  • 術後管理:入院下で安静に数日過ごします。

ただ、すべてのケースで手術を選択できるわけではありません。手術を実施するうえで大切なことを記載します。

・点眼、内服、エリザベスカラー装着、入院で安静にすることができるかどうか?

まず、点眼を嫌がる場合は、手術は推奨されません。術前から術後数カ月~数年において、点眼治療が必要となります。点眼が出来ないと、術後の経過にも悪影響となります。無理やり押さえつけて点眼していくことは、動物にとって大きなストレスとなるでしょうし、長期継続することも難しいでしょう。

また、過度な興奮がなく安静に過ごせることや、エリザベスカラーの装着も必須です。

・白内障のステージ(進行具合)はどうか?

ごく初期の白内障では、進行に時間がかかるため、まずは経過を見ていくことが多いです。

しかし、かなり進行してしまっているケースでは、炎症を伴っていることが多いため、術後合併症のリスクが高まります。当院では3カ月1回ほどの経過チェックをお勧めしています。

・白内障に起因する問題がないかどうか?

白内障による合併症として、白内障起因性ぶどう膜炎という病気があります。これは白内障が進行するにつれてその周囲に炎症が起こるものです。これにより緑内障、網膜剥離、虹彩癒着、水晶体脱臼などの更なるトラブルが起き、白内障手術の大きな弊害となります。

この場合は、炎症を抑える治療、眼圧を下げる治療、脱臼した水晶体を摘出する手術などが検討されます。

・白内障以外の目の病気が潜んでいないかどうか?

浮腫や瘢痕によって角膜が濁っており、術野の視認が困難な場合は、手術が難しいかもしれません。

また、網膜に異常をきたしている場合には、手術適応外となります。水晶体の濁りを取り除いても視力が復活することは望めないため、術前に網膜の検査が必要です。手術をして視力が回復する見込みがあるのかを専門的にしっかりとチェックするべきでしょう。

・全身麻酔に問題がないか?

人と異なり全身麻酔が必要となります。安定して麻酔がかけられる健康状態かどうか、術前の検査が必要となります。

動物の白内障手術では、人の白内障手術よりも術後高眼圧などの合併症が発生しやすい現状があり、なかには視覚の維持が困難になることもあります。それでも、手術は最も効果的に白内障を治癒させ、動物にとっても劇的な改善を与えてくれる方法であると言えます。手術を受ける際には、メリット・デメリットを十分に理解されたうえで臨むようにしましょう。

また、白内障手術はどの動物病院でも対応しているわけではありません。

当院は眼科において検査や手術における最新の設備を保有しています。眼科、外科、内科など全診療科で対応できるように、チームで診断・治療をサポートしております。

内科的治療~点眼薬・内服薬

目薬や内服など薬での治療によって白内障の完治はできません。そのため、内科的治療は、基本的に進行を遅らせる意味合いで選択されます。白内障の初期の場合や、飼い主様が手術ご希望されない場合、手術が適用できない場合は内科治療が選ばれます。

当院では、主に点眼薬や、サプリメントの処方をしています。

また、白内障は、ぶどう膜炎や緑内障、水晶体脱臼などの合併症を引き起こすことも多いため、手術しない場合であっても定期的な診察による経過観察をお勧めしています。

白内障かも…と迷ったら早めに受診を

人間の白内障のイメージで、犬や猫の白内障についても「シニアだから白内障になるのだろう」「様子見をしていいのではないか」という思いもあるかもしれません。

でも、犬や猫の白内障を疑った際は、次のような理由からできるだけ早めに受診・検査をすることをおすすめします。

合併症を引き起こすリスクがあるから

白内障を放置すると、

・緑内障

・水晶体脱臼

・ぶどう膜炎

・網膜剥離

などのさまざまな合併症を引き起こすことがあります。

ただし、白内障の手術後にも合併症のリスクがあるため、事前に獣医師から説明を受けておくことが大事です。

進行が早いケースもあるから

白内障の要因はさまざまですが、なかでも遺伝によって若くして発症すると進行が早いことがあります。

老化現象で白内障を発症するよりも重症化するまでの進行スピードが早いのが特徴です。

犬や猫が辛い思いをするから

白内障は段階を経て、治療をせずにいると失明のリスクが高まります。

初期段階では犬や猫は自覚症状もないですが、やがて視力の低下にともなって動くのを嫌がったりします。白濁が進んでひどくなると目の炎症や痛みを感じるようになり、犬や猫にとっては辛い日々を過ごさなければなりません。

また、白内障をそのまま放置し続けていると「視力を失う」だけでは済まなくなるいこともあります。最終的に失明したうえに、“眼球”そのものを摘出することになる可能性も考えられます。

水晶体が濁ってみえる「核硬化症」という症状もある

瞳が白く見えると「白内障ではないか」と考えるかもしれませんが、実は水晶体が白く見える症状はほかにもあります。水晶体の繊維が外に排出されずに残り、年齢を重ねることでそれが硬くなった症状を“核硬化症”と言います。

加齢によって表れてくる症状で、目のなかが青白い色になることから白内障と間違いやすいです。動物病院で検査をすると、どちらの症状か判別することができます。

核硬化症は視力の影響がほとんどないため、目が白く濁っても日常的な動作に支障はないでしょう。視力が失われることはないので、治療はしなくても問題ありません。

どちらにしても「瞳が白く濁ってきた」と気づいたときは、早めに獣医師への相談が重要です。

まとめ

人間同様に、犬や猫でも白内障は起こります。犬の発症率の方が猫よりもかなり多い傾向です。

白内障は白く濁るだけの病気ではありません。放っておくと視力の低下が進み、最終的には目が見えなくなる可能性が高まります。

正しい検査を行い適切な治療を受けることが大事です。

また、白内障にならないための完全なる予防法はないのが現状です。ただ、早期に発見出来れば、進行を遅らせることや、視力が回復できるケースもあります。

犬と猫の白内障を予防し、適切な治療で視力を保てるように飼主様自身が正しい知識をお持ちになり、定期的に健康診断で獣医師に相談出来る体制を整えておくことも重要です。

・最近よくぶつかるようになった

・ごはんの場所が分からないようだ

・ボール遊びでボールを投げても見つけづらいようだ

・目が白く見える

・涙を流すことが増えた

など、視力や目に関するご不安があれば、ぜひともご相談下さい。



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