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犬の鼻水とくしゃみの原因|ウイルス・細菌・アレルギー・異物など徹底解説2025.12.01

私たち人間と同じように、犬も体調異変のサインとして鼻水やくしゃみを出します。その原因は、風邪やアレルギー、一時的な生理現象、さらには歯周病の悪化など原因はさまざまです。

犬の鼻から垂れる鼻水や、何度もくしゃみを繰り返して辛そうな愛犬の様子を見ると不安ですよね。

安易に様子見をして放置すると背景にある病気が悪化し、鼻水とくしゃみが長引き、犬にとって治療の負担が大きくなる可能性もあります。重度な病気のサインとして、鼻水やくしゃみが出ることもあるため、原因を探って早期治療のためには動物病院を受診することが大切です。

今回は、犬の鼻水やくしゃみの原因とともに、受診するタイミングや自宅での予防法などまでわかりやすく解説します。

犬の鼻水とくしゃみは何が原因?

まずは、犬の鼻水とくしゃみの主な原因を見ていきましょう。

犬の鼻水やくしゃみの特徴

犬が鼻水やくしゃみを出しているのは、体調で何かしらの異変が起こっているサインです。

少しくらいの鼻水なら飼主様が気づかないうちに、犬が自分自身で舐めてしまうこともあります。

犬の鼻水には「透明・粘性がある・血が混じる」といった特徴があり、それぞれ原因もが異なるため、観察することが大事です。

また、くしゃみの回数や、そのほかの様子なども、病院診察時のヒントとなるためメモしておくと安心です。

考えられる主な原因

「風邪」

風邪(ケンネルコフ)やウイルス・細菌感染などによって鼻水やくしゃみがでます。特に、子犬はかかりやすい傾向です。乾いた咳が特徴で、鼻水や発熱もあります。

「鼻炎、副鼻腔炎」

ウイルスや細菌などに感染した、花粉やダニ、ハウスダストなどによるアレルギーを起こして鼻炎となって鼻水が出ることもあります。犬の鼻水のなかでも多い原因です。また免疫細胞が原因となって起こる鼻炎もあります。

「異物混入」

散歩中に草むらに行く犬の場合、草の種や小さな異物が鼻に入って鼻水やくしゃみを出すことがあります。散歩から帰宅したら鼻水やくしゃみが出るといったケースでは、異物混入の可能性も考えられるでしょう。

「生理的な反応の鼻水」

寒い、興奮した、緊張したなどによって一時的に鼻水が出ることもあります。生理的な反応で、継続しないなら気にしなくてもよいことが多いです。

「歯周病」

歯周病が悪化し歯の感染や炎症が鼻に及ぶと、出血や排膿を伴う鼻水が出ることもあり、くしゃみの回数も増えます。そのほか、顔の腫れや食欲低下なども見られることがあります。

「腫瘍」

犬の鼻には鼻腔内腫瘍が発生することがあります。特に長頭種(マズルが長い犬種)におおいとされており、鼻腔腺がんやリンパ腫など知られています。初期症状は、くしゃみや鼻出血であることが多く、レントゲンでの異常や顔の腫れはある程度症状が進行してからでないとわからないことも多くあります。

色から考える犬の鼻水の重症度とは?

鼻水の色によっても、重症度が変わってきます。

無色透明

さらさらの透明の鼻水が短期間出る場合は、生理的なもので軽度のケースが多いです。

・寒い部屋で震えながら鼻水

・ワンワンと吠えた後に鼻水

・緊張して鼻水

というように、寒さや興奮、緊張などが引き金となって“一時的”に出るものは生理的な反応と考えていいでしょう。

ただし、子犬は犬風邪にかかることが多いので、無色透明・一時的な鼻水だとしても注意が必要です。軽い症状に見えても「長引く」「元気がない」など気になる症状があれば早めに動物病院を受診しましょう。

黄色や緑色の鼻水

粘り気があり、なおかつ黄色や緑色といった色がついている鼻水は、細菌やウイルスなどが引き起こしている可能性が高いです。

また、高齢犬の場合、歯周病が原因かもしれません。鼻水だけでなく、口臭も気になるケースは、お口のトラブルを疑って動物病院を受診することをおすすめします。

血が混じる鼻水

赤っぽい色がついた鼻水が出たら、内部で出血しています。感染症や外傷、さらには高血圧や腫瘍などが原因となることがあります。

何らかの原因で出血しているはずですから、原因を突き止めて治療するために動物病院で診てもらいましょう。

犬のくしゃみ…回数から見る軽度と重度の違いとは?

くしゃみの頻度によっても、重症度が違います。

軽度のくしゃみ

1日に数回程度のくしゃみ、それが1~2日という短期間で治まるなら、一時的な反応で心配ないことがほとんどです。

ただし、

・食欲はふだんと変わらないか

・元気はあるか

・くしゃみ以外の異常がないか

などをチェックすることも大事です。

特に、気になる問題がなければ少し様子を見ても問題ないでしょう。

重度のくしゃみ

・くしゃみが何度も止まらず繰り返す

・食欲も元気もなくなった、

・呼吸しづらくて苦しそう

・体重が減ってきた

などの症状があれば軽度とは言えません。

感染症やアレルギー、異物、歯周病などの病気が潜んでいる可能性もあるので、原因特定のために動物病院を早急に受診しましょう。

逆くしゃみとは?

急に空気を吸い込み鼻の奥が刺激されたとき、「ブーブー」「フガフガ」という音を出すのを“逆くしゃみ”と言います。チワワなどの小型犬によく見られ、心配ないことが多いです。

しかし、頻繁に起こるケースは、動物病院で相談すると安心です。

愛犬の鼻水やくしゃみが重症の場合、動物病院受診のおすすめタイミング

犬の鼻水やくしゃみが見られたとき、どのタイミングで受診すべきか不安な飼主様もいらっしゃるかもしれません。

緊急性のある“重度”の症状とは

鼻水に血が混じる、高熱が続く、ぐったりしているといった場合は、緊急性が高い可能性があります。重度のアレルギーや感染症による原因かもしれません。

特に、免疫の低い子犬や老犬は急変する可能性も高いため、できるだけ早く受診しましょう。

受診前にチェックすべきポイント

受診する際は、事前に症状を整理するとスムーズな診断に繋がります。

・鼻水・くしゃみの頻度はどのくらいか

・鼻水の色や量

・食欲はあるか

・元気はあるか

・嘔吐や下痢の有無

・生活環境の変化

・花粉や異物の可能性

あらかじめメモしておくことで、問診の際に伝えやすくなります。

ご自宅でできる犬の鼻水・くしゃみの管理方法と予防のポイント自宅でできる鼻水・くしゃみのケアと予防

犬の鼻水・くしゃみのケア、そして予防方法についてご紹介します。

日常でできるケア

鼻水やくしゃみは、生活環境によってアレルギー症状として起こることがあります。

犬のベッドを選ぶ際は、通気性の良さにも配慮した素材選びも大切です。シーツや毛布などの寝具は汚れやすいため、週1回以上は洗濯することもポイントです。洗濯後はしっかりと乾かして湿気が残らないように注意しましょう。

お部屋の温湿度にも配慮することが大事です。冬の時期には、エアコンで暖房をすると室内が乾燥しやすいため、湿度を40〜60%ほどに保てるように加湿器の使用もおすすめです。

タバコや強力な芳香剤は、犬にとって刺激となり鼻水やくしゃみを誘発することもあるため、控えると安心です。

また、犬の鼻や口の周りのお手入れは、ぬるま湯を染み込ませたコットンで優しく丁寧に拭きましょう。鼻水が固まったときは、お湯で濡らしたタオルで温めてあげると取りやすくなります。

予防のポイント

ワクチン接種や定期健診は感染症対策になります。ケンネルコフやジステンパーなどはワクチン接種により重症化を防ぐことができます。

また、アレルギーの予防で大切なのは、日常的な掃除や空気清浄機を取り入れることです。アレルゲン物質は素材によっては付着しやすいため、ソファやカーテンなどを選ぶ際は、アレルゲンの付着防止として素材にこだわるのもおすすめです。

被毛はこまめなブラッシングをし、鼻周りは花粉・ホコリの付着を予防する意味でも適度にカットしておくと安心です。

鼻水やくしゃみを伴う犬の検査・診断・治療法について

動物病院を受診したときの検査や診断方法についてです。

動物病院で行われる主な検査

動物病院では、血液検査やレントゲン、CT、内視鏡など必要に応じた検査が行われます。鼻水やくしゃみの原因となる病気を探るためです。

飼主様による問診も診断の重要なカギとなるため、事前に詳細をメモしておくことも重要になってきます。

また、鼻水や痰の採取により、細菌培養検査をすることもあります。

治療の方法

鼻水やくしゃみの原因によって治療を行います。細菌感染なら抗生物質、アレルギーなら抗ヒスタミンやステロイドの投与などとです。

鼻づまりで呼吸しづらい場合は、呼吸を楽にするために点鼻処置、鼻腔洗浄やネブライザー(吸入)治療などの方法がとられることもあります。

犬の鼻水・くしゃみと関係あり|歯周病の治療法と予防とは

見過ごされがちですが、歯周病が原因で鼻水やくしゃみがひどくなるケースもあります。年齢とともに歯周病のリスクも高くなるため、基礎知識としておさえておくことをおすすめします。

歯周病が鼻症状に関係する理由

犬の口腔と鼻腔は隣り合った構造をしているため、歯周炎にようぃ口腔内の炎症が歯槽骨に及び骨を破壊すると、その炎症や感染が鼻腔にも広がることがあります。症状が悪化すると歯と鼻の間に大きな穴(瘻管)ができ、それによって慢性的な鼻炎を引き起こすケースもあるので注意が必要です。

鼻水がひどい、くしゃみを繰り返す場合は歯周病の可能性も考えられます。

特に高齢犬はそもそも年齢的に歯周病のリスクが高いです。

「鼻水・くしゃみ」に加えて、

・口臭が強い

・口から出血している

・顔に腫れがある

という症状が見られる場合は、早めに動物病院で診てもらいましょう。

歯周病・口腔鼻腔ろうの治療

歯周病の治療は、進行の状態によって異なります。

まだ軽度の段階なら歯石除去で改善することが多いです。

一方、歯のぐらつきや膿が出ていれば結構進行しています。重度の場合は抜歯が必要になることもあります。抜歯後は鼻腔との瘻管がないかをチェックして、瘻管が認められた場合は歯肉縫合や歯肉フラップ縫合術を行い、瘻管を閉鎖する手術を行います。

高齢犬は年齢的に全身麻酔に耐えられない可能性もあるため、抗生物質や痛み止めなど内科的治療を中心に行うこともありますが、当院では、年齢だけを理由に麻酔下での歯科治療をお断りすることはありません。ある程度の高齢であっても、歯石除去や抜歯を行うことで、その後の生活の質が向上し、食欲元気が以前のように戻る例が多くあるからです。まずは、動物病院を受診し、現状を確認して最適な治療方針を獣医師に計画してもらうことが大事です。

予防のポイント

毎日の歯磨きやデンタルガムなどによるケアが歯周病予防になります。子犬時期から歯磨きをすることで成犬になってからもスムーズにケアに繋がるでしょう。

フード選びも歯周病対策のひとつです。犬にとって「美味しい香り・食べやすい」という魅力がある反面、歯に汚れが残りやすいのがウェットフード。毎日の歯磨きを習慣化しないと歯周病のリスクが高まります。

一方、カリカリのドライフードは歯垢がつきにくいため、犬の歯の健康をキープしやすい傾向です。

いずれにしても、動物病院で口腔内のチェックを定期的に受けることで、早期発見と早期治療に繋がります。

まとめ

犬の鼻水とくしゃみは、風邪やアレルギー、一時的なものまでさまざまな理由があります。短期間でおさまる場合は問題ないことが多いですが、軽視して慢性化すると犬自身の身体への負担が大きくなってしまいます。

ひどくなると「鼻水に血が混じる」「くしゃみが繰り返される」「食欲・元気がない」といった心配な症状も見られるようになります。

そして“歯周病”が原因で起こる鼻水やくしゃみもあり、見逃せません。歯周病という根本的な病気を何とかしないと慢性的な鼻炎やくしゃみが続き、犬にとっては辛い毎日になるでしょう。

特に、歯周病にかかりやすい高齢犬の場合、進行によって口臭や出血、顔の腫れも目立つようになることもあります。

・大量の鼻水が毎日のように出る

・ドロドロした色のついた鼻水

・鼻血も混じる

・鼻づまりで呼吸が辛そう

・くしゃみが続く

・体重が減ってきた

・口臭がひどい

など、少しでも気になる症状があればお早目に動物病院を受診することが大切です。



竹原 秀行
監修者

竹原 秀行

竹原獣医科院 院長

所属:比較眼科学会

2019年~ 川崎市獣医師会 顧問
2011年~2019年 川崎市獣医師会 会長
2009年~2011年 日本小動物獣医師会 理事

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