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犬や猫の熱中症とは?なりやすい理由や初期症状、効果的な予防法などを詳しく解説します2025.09.18

ひと昔前の夏と比べると、年々“暑さ”が強烈に感じられるようになってきましたね。

この厳しい暑さは、人間だけでなく犬や猫にとっても大きな負担となり、熱中症のリスクを高めています。

人間は熱中症の知識を深め自分で対策できますが、大切な愛犬や愛猫を守るためには飼い主様の正しい理解や対策が欠かせません。

被毛に覆われ体温調節が苦手な犬や猫は、熱中症が重症化すると命に関わる深刻な状況に陥ることもあります。

そこで今回は犬や猫を熱中症の危機から守るため、犬や猫の熱中症の症状や気をつけるべきシーン、予防法などについて解説していきます。

目次

犬や猫はなぜ熱中症になりやすいのか?人間との違いと注意点もふまえて解説

はじめに、犬や猫が熱中症になりやすい理由について、人間との違いもふまえてご紹介していきます。

熱中症とは?どんなメカニズムで起こる?

熱中症は暑い環境において体温調整ができず、体内に熱がこもり体温が異常に上昇する状態のことを言います。

人間なら「暑い⇒汗をかく」というメカニズムで熱を逃がすことができます。でも、それでも急激な暑さで熱中症になる方も多いですよね。

犬や猫は汗腺が少なく、体温を効率よく放出しづらいため、体温が急激にあがり臓器に悪影響を及ぼす可能性があります。

犬や猫が熱中症になりやすい理由とは?

暑さに慣れていないGWごろから、油断しがちな秋も注意

以外かと思われますが、熱中症で来院する症例は、真夏は少ないです。それは、人自身の熱中症リスクが高い為、熱中症対策が万全に行われることで、犬猫の熱中症リスクも下がっているのだと考えられます、また、暑さに体が慣れていない5月や湿度が一気に上がる6月頃に熱中症が多い傾向もあります。これからの秋の時期にも熱中症のリスクがありますので、まだまだ油断はできません。

被毛によって熱がこもる

人間は季節に応じて衣類を分けて着用しますが、犬や猫はオールシーズン“被毛”に覆われています。ペットの被毛は、冬は温かく快適な反面、夏は熱がこもって熱中症のリスクが高まります。

また、人間のように「暑いから服を脱ごう」といった自己調整もできず、常に暑さと闘わなければなりません。

汗腺がすくなく体温調節が難しい

全身に汗腺がある人間は、暑くなると発汗して体温調整が可能です。しかし、犬や猫は肉球や舌など限定的な部分でしか発汗ができません。

特に犬は、口を開けて「ハアハア」と呼吸するパンティングで体温調整をしますが、高温多湿になり過ぎると効果が追い付かずに熱中症になってしまうのです。

地面からの照り返しで暑さを感じやすい

犬や猫は人間よりもかなり小さい体で、地面からの“照り返し”の影響を受けやすいです。特に夏のアスファルトはかなり高温で、素足で散歩する犬にとっては負担が大きいです。

また、室内でも床に近いところで過ごすため、涼しい空気が循環できずに「暑さ」を感じやすいこともあります。

犬種・描種によってはリスクが高い

パグやシーズー、フレンチブルドッグ、ペルシャ猫などの「短頭種」は、短い鼻と狭い気道によって熱中症にかかりやすい傾向です。

犬や猫は「熱中症」に対する意識がない

人間は暑さを感じて「こまめに水分を補給する」「エアコンをつける」「うちわであおぐ」など自ら対策が可能です。でも、犬や猫の場合は暑さへの意識はなく、自分で熱中症対策ができません。

また、犬や猫の生活範囲は限定的で、散歩や外出時以外は基本的に「家の中」。飼い主様が不在中は屋内で留守番する時間も多いかもしれません。閉めきった狭い部屋では室温が上昇しやすく、熱中症になることもあります。

犬や猫の熱中症で飼い主様が注意すべき点とは

汗をほとんどかかない犬は、体温を下げるために口を開けて舌を出してハアハアという「パンティング」を行います。このパンティングは、暑いときだけでなく、運動後やストレスを感じたときにも見られる症状のため、必ずしも熱中症とは限りません。

一方、猫の場合はパンティングには注意が必要です。

というのも、猫は基本的に“鼻呼吸”をする動物で、体温調節のためにパンティングをすることは稀です。そのため、猫がパンティングをしている場合は、熱中症をはじめ、強い恐怖や激しい運動、呼吸器疾患、心臓病といった「異常のサイン」の可能性が高いです。

愛猫にパンティング行動が見られた際は、すぐに動物病院での受診が大切です。

夏に増える犬猫の熱中症、その主な原因と発症しやすいシーン

犬や猫は人間のように汗で熱さを放出するのが難しく、被毛にも覆われているため、夏の暑さにはとても弱い動物です。特に高温多湿の日本では、屋外の暑さだけでなく、室内・車内の熱のこもりは尋常ではなくなっています。

また、完全室内飼いの猫は犬と違って散歩に行かないため熱中症のリスクが少ないように思えるかもしれません。

もともと猫の祖先は砂漠で生息していたため暑さには比較的強いと考えられているものの、日本の高温多湿環境には弱いです。温湿度管理が不十分な屋内では熱中症になることもあります。

次に、夏に犬や猫が熱中症を発症しやすいシーンをご紹介します。

散歩や運動

屋外で散歩中に熱中症になる犬も少なくありません。地面との距離が近い犬は、地面からの輻射熱により熱を感じやすいです。

そして“歩く”といった運動で体力を消耗することから、熱中症のリスクは高まります。真夏日にドッグランなどで激しい運動をするのはとても危険です。

留守番

屋内なら熱中症になりづらいと思われがちですが、飼い主様不在中の“留守番”で熱中症になる犬や猫もいます。エアコンを適切に使って温度管理が行われていれば比較的安心ですが、風通しの悪い部屋で長時間過ごすと熱中症のリスクは高まるでしょう。

車内

外出時、車に長時間乗って熱中症になるケースもあります。たとえエアコンをつけても、後部座席は十分に冷えないことも多いです。

しかも、外からの日差しで車内の温度は上昇します。ペットがいるキャリーケースの中の熱がこもることもあるのです。

また、少しの間…とエアコンをつけた状態でペットを車内に残すのも大変危険なので注意しましょう。

飼い主が見逃しがちな犬猫の熱中症の初期症状と特徴的なサイン

熱中症の初期症状は飼い主様も気づかず見逃してしまうケースもあります。次に一般的な初期症状をご紹介していきます。

初期に見られる症状

熱中症が軽度の場合、

・よだれが垂れる

・食欲がない

・心拍数が増える

・目の充血、歯肉が赤くなる

・体が熱い

・ハアハアと呼吸が苦しそう

・いつもより元気がない

などの症状が見られます。

まずは、涼しい場所に移動させ、応急処置をしましょう。意識がしっかりある場合は、ゆっくり水分を飲ませたり、身体を濡れタオルで冷やしてあげます。ただし、凍った保冷剤を直接あてると皮膚の凍傷や体の冷やしすぎになるため避けてください。

こんな症状は重篤な可能性も…

熱中症が重症化すると、

・意識がなくなる

・下痢・嘔吐する

・ぐったりして動かない

・痙攣を起こす

・紫色の舌になりチアノーゼが見られる

・呼吸困難になる

など明らかな異変が起こります。

意識レベルが低下しているときは、できるだけ早く動物病院に行き治療してもらいましょう。

個体差があるので注意する

犬や猫の熱中症の症状には個体差があります。軽度に見えても実は重篤なケースもあります。犬や猫は、本能的に“具合が悪い”という弱さを周囲に見せずに我慢する動物です。

「いつもと様子か違う」といった飼い主様の直感も大切に、熱中症の疑いを感じたら獣医師に診察してもらうことをおすすめします。

「熱中症かも?!」そんな緊急の時は…

熱中症かなと思ったら、動物病院への受診が必要ですが、すぐに連れていけない場合や初期の症状なら自宅での緊急対応も検討しましょう。(※横倒しになったりぐったりしているなど、症状が重度の場合は、出来るだけ早く動物病院を受診してください。)

犬の場合は、水をかけて、冷風を当ててやることをお勧めします。氷水を使ったようなとても冷たい水風呂につけることはしないようにして下さい。表層の末梢血管が収縮していまい、血液が冷えにくくなるため、体の芯の温度が下がりにくくなるとされています。

猫の場合は、水をかけるなどすると驚いて、余計に緊張、興奮させてしまうかもしれません。部屋自体を冷やし、静かな空間で落ち着かせてあげてください。特に猫は熱中症よりも、緊張や病気によって開口呼吸になることも多いので、極度なストレスを与えることは逆効果です。

日常でできる犬猫の熱中症予防と快適な環境作りのポイント

次に日常的にできる犬や猫の熱中症の対策のポイントをご紹介します。

散歩の時間に注意する

真夏の犬の散歩は注意が必要です。気温が高いだけでなく、地面もかなり熱くなっています。50℃を超えたアスファルト舗装を靴も履かずに歩くことは、肉球の皮膚にとって大きな負担です。

日没後でも温度はなかなか下がらないため、地面や空気が涼しい早朝が理想です。

・できるだけ日陰を歩く

・水分を補給する

などに注意し、特に暑い日は無理をせずに屋内で運動させるのもいいでしょう。

被毛のブラッシングをする

ダブルコートの被毛の場合、密に生えた保温効果が高いアンダーコートがたまり過ぎて、通気性が悪くなることがあります。ブラッシングで通気性が改善できれば、熱中症対策にもつながります。

適切にエアコンを使う

エアコンなしで閉め切った部屋では、急激に室温が上昇して熱中症のリスクが高まります。

日当たりの良い部屋はエアコンをつけても室温が冷えないこともあります。カーテンなどを使って直射日光を遮ることがポイントです。

部屋の温度計を設置し、設定温度と室温のバランスを見ながら適切にエアコンを使うことが大事です。

また、ペットがいる場所に直接風があたると冷え過ぎで体調を崩す可能性もあるので注意しましょう。

扇風機の使用には注意が必要

汗をかきやすい人間と違い、犬や猫は汗腺の少なさから“気化熱”が発生せず、扇風機の風にあたっても涼しさを感じづらい体質です。

そのため、扇風機やサーキュレーターを使うなら「エアコンの冷気を循環させる目的」にすることで、より快適な室温にできます。

ただ、扇風機やサーキュレーターをペットの近くに置くと、走ったり歩いたりでぶつかって被毛が巻き込まれ、ケガのリスクも高まるので注意しましょう。

水分をいつでも飲める環境に

犬や猫が自由に水を飲める環境を用意しましょう。1ヶ所だけでなく、数か所に水が入った容器を置いておくことをおすすめします。

窓を開けるなら“脱走”に注意する

熱中症対策として窓を開けて風を取り込む場合は、脱走に注意しましょう。特に、猫の場合、少しの隙間からでも外に出ることが多々あります。脱走防止用の柵、ロック付の網戸などを施すことが大事です。

ひんやりするアイテムも設置する

冷たいシートなど、犬猫用のひんやりアイテムを設置しましょう。たとえば、停電でエアコンが止まったときなどのリスク回避にもできます。

【まとめ】愛犬・愛猫の命を守るために今からできる熱中症対策

暑い季節になると「熱中症に気をつけて」という言葉はよく耳にしますよね。夏場は人間だけでなく、犬や猫も熱中症になりやすいため、ペットと暮らしている飼い主様が注意してあげる必要があります。

熱中症は「夏」のイメージがあるかもしれませんが、春や秋の気温が高い日や、冬のこたつに長時間入って熱中症になる犬な猫もいます。

子犬・子猫、シニア期、肥満気味の子、短頭種は暑さに弱いため、特に熱中症対策を心がけましょう。

熱中症は重症化すると最悪の場合は命にも関わります。

日ごろから犬や猫の熱中症の症状や、予防法も理解し、飼い主様がしっかり対策を行うことが大事です。

熱中症かなと思った際は、お気軽に川崎市の竹原獣医科医院までご相談ください。



竹原 秀行
監修者

竹原 秀行

竹原獣医科院 院長

所属:比較眼科学会

2019年~ 川崎市獣医師会 顧問
2011年~2019年 川崎市獣医師会 会長
2009年~2011年 日本小動物獣医師会 理事

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